小学1年生のHちゃんは、漢字の練習が苦手でした。
線が曲がることに「怖い怖い。」と言って何度も消しゴムで消すので、学校の授業の中で終わらせることができず、大量の宿題になってしまっていました。
Hちゃんのお母さんは先生に怒られたり、バツをつけられることに怯えているのかと思っていましたが、そうではないようで、どんなに「きれいに書けてるよ。大丈夫だよ。」と伝えても「怖い怖い。」といって、何度も消すのです。
放っておくと、漢字ドリル1ページに1時間くらいかかり、もう20ページくらいやりましたってくらい、疲れてしまいます。
冬休みの最後の日、お父さんと一緒に提出物をそろえていたところ、3か所の抜けてるところがありました。
ほんの少し書くだけでいいのに1時間近くもかかり、途中でパニックになって、Hちゃんは号泣してしまいました。
お母さんがHちゃんに聞いたところによると、Hちゃんの心の中には“きれいに書かないとダメ君”という子がいて、その子は、かつて字が汚いことで損をしたり、つらい思いをしてきたので、Hちゃんにそんな思いをさせたくないと厳しくチェックしてくるそうです。どんなにママやパパや先生が「Hちゃんの字はきれいだよ。」と言っても、「もっときれいじゃないと危ない!」と言ってくると、Hちゃんは話してくれました。
子供の話だからといってまともに聞き入れなかったり、やりたくないから嘘をついているんじゃないかと逆にしかりつけたりする大人のほうが多いかもしれませんが、お母さんとお父さんは、Hちゃんの話をきちんと聞いて、そして信じました。
ファミリーコンステレーションで子供の問題でワークを受けるときは、親が代理で受けることができます。
コンステレーションでは何世代も前の出来事が出てきます。
Hちゃんは家系の中で見捨てられ、忘れ去られて居場所をなくした小さな魂と自分を同化させていたので、漢字を書くという簡単なことが、とても重大で命がかかるようなことになってしまったのですね。
引き受けた事柄というのは、もともとの事柄よりも大きくなるので、本人にとっては重荷になります。
しかしこの重荷は勝手に背負わされたものではなく、背負った本人が自らが無意識に引き受けているのです。
なぜ、引き受けるのか。これは自分が引き受けることで、親を救うことができると思い込む子供の自己中心的な考え方によるものであり、また、自分が犠牲になることで家系が存続し、親や自分が生き延びることができると信じているからです。
ファミリーコンステレーションの創始者であるバートへリンガーはこれを子供たちの盲目的な愛と表現し、愛の深い子供がそれを引き受けると言っています。
Hちゃんが学校で書いた文章の一部を、ご紹介させていただきます。
わたしは一年前のとき かん字が大きらいでした
わたしは一文字かいてみるとダメダメと思い けしてとゆうのがあって
自分がいいなーと思うまで ずーとけすのでした
ひどいときは十回くらいけしてました
それにわたしだけドリルのしゅくだいを出すこともありました
それくらい大きらいだったのです
(中略)
そうだんでは「字がうまいよ じしんをもって」といってくれました
だからじしんをもってやったらできるようになり
けすのも六回ぐらいになってかん字がすきになりました
(注:そうだんとはファミリーコンステレーションのことです。)
小さな子供は頭でものを考えず、心に浮かんできた事をそのまま言葉にします。大人が「何を言ってるの?」思うことも子供にとっては真実です。大人が見ることができないものを見ているのでしょう。
ご両親がHちゃんの声をきちんと受け止めて、ファミリーコンステレーションにつなげてくださいました。
ご両親にも感謝します。今は以前にそんなことがあったことも忘れている日々だそうです。
気が付いたら以前気になっていたことが気にならなくなっている。
決してその人を直すとか、何かして頑張るということではなく、困難から解放されて気にならなくなっている。
これが、ファミリーコンステレーションの効果だと思います。
Hちゃんのコンステレーションをファシリテートさせていただいたおかげで、子供の学習障害などの困難な状況にファミリーコンステレーションが役に立つことがあるかもしれないということがわかり、感謝しています。
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